事前確定届出給与
目次
Toggle今回は「事前確定届出給与」について、わかりやすく解説いたします。
役員報酬にまつわる節税対策の中でも、「意外と見落とされがち」だけれど「正しく使えばしっかり効果のある」制度の一つが、この事前確定届出給与です。
1.事前確定届出給与とは?
法人が役員に支給する給与は、原則として損金(=税務上の経費)になりません。
しかし、以下の3つのいずれかの要件を満たしていれば、損金として認められます。
- 定期同額給与
- 事前確定届出給与
- 利益連動給与(※大企業など一部限定)
このうち、年に1回支払う役員賞与などで使えるのが「事前確定届出給与」です。
2.制度の概要
「事前確定届出給与」とは、その名の通り、
あらかじめ支払日・金額を定めて、税務署に届け出ることで損金算入が認められる給与のことです。
たとえばこんなケースで使います:
「役員賞与として、12月10日に100万円を支給したい」
→ その内容を、所定の書式で税務署に届け出ればOK。経費になります。
3.要件と手続き
事前確定届出給与として認められるためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
【1】支給の決議
定時株主総会または取締役会等において、支給対象者、支給額、支給日を事前に明確に決定しておき、それを変更せずに必ず実行する必要があります。
【2】届出書の提出
「事前確定届出給与に関する届出書」を、以下のいずれか遅い日までに所轄税務署へ提出します。
- 決議日から1か月以内
- 事業年度開始の日から4か月以内
※上記期限を過ぎると、たとえ支給が行われていても損金算入は認められません。
4.よくある失敗例
❌ 金額や支給日を変えてしまった
→ 届出通りでなければ損金にできません。支給日が1日ズレてもNG。
❌ 届出書を出し忘れた
→ 支払っても損金不算入。税金が増えます。
❌ 口頭での決定だけで議事録がない
→ 税務調査で否認されるリスクがあります。正式な議事録を残しましょう。
5.議事録レイアウト(例:株主総会議事録)
株式会社〇〇〇〇
定時株主総会議事録
1.開催日時 令和○年○月○日 午前10時
2.開催場所 本社会議室
3.出席株主 株主全員出席(議決権数○○個)
4.議長 代表取締役 □□□
議事
第1号議案 役員報酬の改定について
役員賞与について、以下の内容で事前確定届出給与として支給することを提案したところ、全会一致で承認可決された。
役職〇〇、氏名□□□、支給予定日 令和○年○月○日、支給金額〇〇円
以上をもって本総会の議事を終了し、本議事録を作成し、
議長及び出席取締役がこれに署名押印する。
令和○年○月○日
株式会社〇〇〇〇
定時株主総会議長 □□□ 印
取締役 △△△ 印
6.まとめ
- 事前確定届出給与は、役員賞与などを損金算入するための有効な仕組みです。
- 要件は「決議」「届出」「実行」の3点セットであり、いずれも欠けると認められません。
- 届出期限は「決議から1か月以内」または「事業年度開始から4か月以内」の遅い方が基準となります。
- 金額や支給日を一切変更できないため、計画段階から慎重に設定する必要があります。
- 議事録を残しておくことが、税務調査時の最大の防御策となります。
7.最後に
- 制度を活用するかどうかは、会社の利益計画や資金繰りと照らし合わせて判断することが重要です。
- 「提出期限」「支給日」「金額」は絶対条件であり、ミスがあれば損金算入は不可能になります。
- 顧問税理士と事前に相談し、スケジュール管理を徹底することが成功のカギです。
- 実務担当者は決算スケジュールの一環として、毎年チェックリスト化して管理することが望ましいです。
- 役員報酬の全体設計(定期同額給与とのバランス)と合わせて活用することで、最大の節税効果を得ることができます。