消費税軽減税率について

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まずは、消費税の歴史を紐解いてみましょう。遡ること元号が平成に変わり登場した消費税は新たな税金として登場しました。今まで経験のない税制に対して、初めてのことに取り組む大変さは、私たちが過してきた歴史が証明しています。平成元年(1989年)4月1日、3%の税率から鳴り物入りで始まった消費税は、その後税率を上げることに対して多大なる国民の抵抗もあり、政治とも絡みソフトランディングな対応が強いられたのは記憶に新しいところではないでしょうか。

時代の流れと共に少子化に伴い、人々の生活と年金制度とのはざまにおいて、消費税の存在は徐々に大きくなりました。平成9年(1997年)には税率が5%になり駆け込み需要が発生したことからも分かるように、この税金に肌で感じるほど敏感になり生活の中のウェイトを占める割合がじわじわと増していったのです。 

平成26年(2014年)に税率が8%に変更になった時点では、消費税も生活の一部になってきた感がありました。ただ、大台の10%に至る長い道のりにおいて、その比重は、会社においても世帯においても大黒柱に大きくのしかかってくるものまで成長してきました。この時点までは、単に税率が右肩上がりに増えていく明解さを一方で感じながら、その一方で重税感をずしりと感じていたわけです。その意味でも、アメとムチの関係性を背景にした新たな制度である消費税の「軽減税率」がどう普及していくのか不安がありました。 

現時点においては一度定着化した制度に対して、国民性からか、この「軽減税率」もそれほどの大騒ぎとはなっていませんが、当初からその意義について問題視する意見が多くありました。令和元年(2019年)10月1日、税率が10%となると同時に開始した軽減税率ですが、現段階においても、その意見は根強くあり、単一税率の方が公平性を保つことができるとも言われています。この軽減税率の定義ですが、複数税率とも言われ、特定の品目の課税率を他の品目に比べて低く定めることをいいます。 

さて、消費税の軽減税率は、消費税の逆進性を緩和するために導入された制度であると説明されています。 

ここでいう消費税の逆進性とは、低所得者層と高所得者層に同一の税率により消費税を課税することによって、相対的に低所得者層の税負担が重くなることをいいます。そもそも軽減税率は、低所得者層の消費税負担を軽減することを目的とした制度として生まれました。税率を引上げる際に低所得者対策として抱合せで行った措置ともいえそうです。 

従って、欧州に例を見ても、食料品などの生活必需品に軽減税率を導入している国は多いのですが、高所得者の方が低所得者よりも高額な食料品を購入しているため、高所得者がより多くの恩恵を得る結果に陥りやすいのが難点です。 

日本での軽減税率の対象は、①酒類及び外食サービスを除く飲食料品の譲渡、②週2回以上発行する定期購読契約に基づく新聞の譲渡、の2つです。 

軽減税率の対象となる飲食料品から 除かれる品目について物議を醸し出していましたが、飴玉をしゃぶっておとなしくしているようにも思えます。飲食料品は、人の飲用又は食用に供されるものであるため食品表示法に規定する食品をいうとされています。よく例とされるのが、外食にあたるか否かの問題ですが、テイクアウトや出前は食料品の購入とされ、外食自体やケータリングは外食サービスと規定されています。実際には、イートインコーナーでの飲食といったグレーゾーンにかかるものがあり混乱を招くおそれがあるとされていましたが、大事には至らなかったようです。 

ただし、諸外国では各業界団体からの軽減税率拡充の要望も多く、選挙の票集めの道具にされていると言った意見も挙がっています。上記のような軽減税率の対象か否かの論議に関しては、導入国によっては線引きの難しさが係争案件を多数発生させていることも事実です。 

軽減税率制度は、問題を多く抱えていることから取りやめて、高所得者が恩恵を得る逆進性対策は、低所得者に給付を行う方法がより効果的であるとの考えは有力です。これまでも、消費税率が上がる度に住民税の非課税世帯に対して実行されていることからも実証されているものです。 

とはいえ、税率10%と軽減税率8%という消費税制度は少しずつ前進していることも既成のものとなりました。今一度、今後訪れるインボイス制度を踏まえて見返す機会としたいと思います。会社を経営する事業者たちにとって、消費税制度に翻弄されては商売上がったりの極みです。消費税に対する考えを整理して、賢い経営を実行しましょう。 

税金にまつわる困り事は、節税の面に限りません。日々の取引は会計ソフトで計算しなければ、帳簿の作成もままなりませんし、申告や届出、納税など多岐にわたります。現在の企業経営の中で疑問が生じた際には、お気軽に質問を投げ掛けてください。税理士法人K&K Japanでは、いつでもご相談をお待ちしております。

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