社長が自宅を事務所にしている場合の節税方法
目次
Toggle今回の事例紹介は『社長が自宅を事務所にしている場合の節税方法』です。
今回は特に、自宅兼事務所という形態における実務上の節税ポイントに焦点を当てて解説いたします。
1.相談内容
当社は設立5期目を迎える中小企業で、社長は個人宅の一部を会社の事務所として使用しています。
法人登記上も本店所在地は自宅住所と同一となっており、実際の業務(事務処理・会議等)も主に自宅内で行っています。
このようなケースにおいて、法人と個人の費用が混在しやすく、適切な按分や経費計上がされていないと、節税の機会を逃してしまう可能性があります。
こういった場合、どのように節税を図ればよろしいでしょうか。
2.自宅兼事務所の費用を法人で負担できるか?
結論から申し上げますと、自宅の一部を事務所として法人活動に使用している場合、その使用部分に応じて、一定の費用を法人の経費として計上することが可能です。
具体的には以下のような費用が対象となり得ます:
- 家賃(住宅ローンの場合は按分した利息部分)
- 水道光熱費(電気代・ガス代・水道代)
- 通信費(インターネット・電話等)
- 固定資産税(自宅所有者である場合)
- 修繕費(対象が事業部分に限定される場合)
これらは「家事関連費」と呼ばれ、法人税法上でも「事業の遂行上必要と認められる部分に限って経費にできる」というルールが定められています。
3.経費として認められるためのポイント
このような経費を法人で計上する場合には、合理的な按分根拠を用意することが不可欠です。以下のような基準がよく用いられます:
- 面積按分(事務所として使用している部屋の床面積 ÷ 自宅全体の床面積)
- 使用時間按分(業務時間帯の使用割合等)
- 実績ベース(電気代のメーター分計や通信記録等)
例えば、自宅の1階を事務所として使用しており、1階が全体の40%を占めるのであれば、対象となる経費の40%を法人で負担可能とすることが考えられます。
この按分比率については、文書で根拠を明示し、税務調査の際にも説明できるようにしておくことが望まれます。
4.家賃の支払いと「社宅契約」について
さらに一歩進んで、自宅を法人名義で借上げる「社宅契約」を活用することで、節税効果を高めることも可能です。
この場合、会社が社長から「社宅」として借りる形を取り、会社が一定の家賃を社長に支払います。
社長はその対価として、一定の賃料相当額を会社に返還する必要がありますが、家賃収入に対する税務上の扱いや社会保険料の抑制効果など、総合的なメリットがあります。
ただし、過度に高額あるいは低額な家賃設定や、実態にそぐわない契約内容は、税務上の否認リスクがあるため、専門家と相談のうえで内容を整える必要があります。
5.注意点と実務上の対応
- 自宅と事務所の明確な使用区分を記録・説明可能な状態にしておくこと。
- 按分方法は合理性を持ち、継続的に適用すること。
- 契約関係(賃貸借契約書や社宅利用契約など)は必ず書面で残す。
6.まとめ
社長が自宅を事務所として使用している場合には、家賃や光熱費の一部を法人経費とすることで節税効果が期待できます。
ただし、形式だけでなく、実態と書類整備が伴っていないと否認リスクが高くなりますので、事前の準備と専門家のアドバイスを受けることが重要です。
会社・社長双方にとって無理のない形で制度を活用し、安定した経営と適正な税務処理の両立を図っていきましょう。
7.最後に
社宅契約(自宅を会社に貸す場合)の節税効果について
- 社長が自宅を会社に貸す場合の税務上の扱い
社長が自宅の一部を会社に貸し、会社が賃料を支払う形にすると、会社側はその分を損金(経費)にできますが、社長側には「不動産所得」が発生します。この所得に対して所得税・住民税が課税されるため、法人側の節税額と個人側の課税額を比較し、場合によっては全体の税負担が増えることもあります。 - 不動産所得を発生させないための賃料設定
社長側で必要経費(減価償却費、固定資産税、火災保険料、修繕費等)を差し引いた後に所得が発生しないよう、賃料を調整することで、個人側の課税を抑えつつ法人側で損金算入することが可能です。 - 住宅ローン控除や3,000万円控除への影響
自宅の一部を事務所として会社に貸す場合、その部分は「居住用」とみなされなくなり、住宅ローン控除や売却時の3,000万円特別控除の対象割合が減少します。例えば、40%を事業用とした場合、住宅ローン控除や3,000万円控除も60%分しか適用されません。
ただし、「居住用部分が90%以上」であれば全体を居住用とみなす特例もあるので、事務所部分の割合に注意が必要です。
以上のとおり、実務上の留意点を踏まえて節税は考えていきましょう。