法人設立と消費税の納税義務
目次
Toggle法人を設立したからといって、すぐに消費税を納める義務が発生するわけではありません。法人設立直後には一定の条件を満たせば消費税の免税事業者として扱われることがあります。
ここでは、法人設立後の消費税納税義務が「いつ」「どのような条件で」発生するのかを、わかりやすく解説します。
基本原則:原則2期間は免税
法人設立直後は、原則として以下の期間について消費税の納税義務が免除されます。(免税事業者)
- 設立第1期(事業開始日〜決算日)
- 設立第2期(第1期終了の翌日〜次の決算日)
ただし、次に述べる「例外」に該当する場合は、設立初年度から課税事業者となる可能性があります。
例外:資本金や売上の規模による課税義務
以下に該当する場合、設立初年度から消費税の課税義務者になります。
【初年度から課税事業者となる条件】
(1)資本金が1,000万円以上
法人設立時の資本金が1,000万円以上であれば、設立初年度から消費税の納税義務があります。(課税事業者)
(2)特定期間の課税売上高 or 給与等支払額が1,000万円超(2期目から)
設立2期目以降は、前々期の実績に基づき判定されますが、法人の場合は前期の前半6か月間(=特定期間)をもとに、次のいずれかを満たすと次期は課税事業者になります。
- 課税売上高が1,000万円を超える
- 人件費(給与等支払額)が1,000万円を超える
(3)消費税課税を「自ら選択」する場合(課税事業者選択届出書)
免税事業者であっても、自主的に「課税事業者」を選択することも可能です。これには次のようなメリットがあります。
◯ インボイス制度に対応できる
2023年10月からスタートした「インボイス制度」では、課税事業者しかインボイスを発行できません。インボイスがないと、取引先が仕入税額控除を受けられず、取引上不利になる場合があります。
◯ 設備投資が大きい場合に有利
設立初期に多額の設備投資を行う場合、仕入税額控除が可能となるため、課税事業者になることで還付を受けられる可能性があります。
▷ 必要書類
- 消費税課税事業者選択届出書
- 提出期限:課税期間開始前日まで
(4)インボイス制度と免税事業者の関係
2023年10月から始まったインボイス制度(適格請求書等保存方式)により、免税事業者は次の点に注意が必要です。
- 免税事業者はインボイスを発行できない
- 取引先が免税事業者を避ける動きがあり、取引が成立しない又は取引価格の値引き要請される可能性もあります
- インボイス発行を希望する場合は、税務署への届出が必要
- 登録には「課税事業者であること」が条件
まとめ:あなたの法人が免税か課税かを判断するポイント
項目 | 内容 |
---|---|
設立初年度 | 原則として免税事業者(資本金1,000万円未満の場合) |
資本金が1,000万円以上 | 初年度から課税事業者 |
2期目以降 | 前期の「特定期間」に1,000万円を超える売上又は給与支払があれば課税事業者 |
任意の課税選択 | 「消費税課税事業者選択届出書」で課税事業者を選択可能 |
インボイス制度 | 発行には課税事業者+登録申請が必要 |
最後に、課税事業者選択に際して以下の事項につき十分にご留意ください。
○免税事業者から課税事業者への「選択」の注意点
- 一度「課税事業者選択届出書」を提出すると、原則として2年間は取り下げできません。
- 設備投資による還付狙いで課税事業者を選択する場合も、2年間は課税事業者であり続ける必要があるため、事業計画とキャッシュフローを十分に検討してください。
○ 免税事業者の「みなし仕入率」や簡易課税制度の活用
- 課税事業者になる場合、簡易課税制度の適用も検討できますが、適用には事前の届出と条件があります。
- 業種によっては簡易課税の方が有利な場合もあるため、制度の選択を検討しましょう。
基本的に消費税の届出期限は「前期末まで」となっているものが多いです。税理士とよく相談してご自分の会社に合った適切な届出をしましょう。