事前確定届出給与の届出内容に変更がある場合
目次
Toggle今回の事例紹介は『事前確定届出給与の届出内容に変更がある場合』です。
以前に紹介した『設立初年度の役員報酬の支給決定』の記事でも扱われていた『事前確定届出給与』について深掘りしていきます。
1. 相談内容
当社は9月決算法人の同族会社です。
11月15日に定時株主総会を開催し、3月31日に社長および専務に対して、事前確定届出給与について支給を決定し、期限内に税務署長に届出を行っています。
今回、支給決定後に社長に対しては事前確定届出給与を届出たとおり支給しましたが、専務については体調不良などの理由から、支給を取りやめました(専務に対する支給金額は0円)。
この場合は法人税の取扱はどのようになるのでしょうか。
2. 事前確定届出給与に関する変更届出書の提出
この場合、専務の体調不良による事前確定届出給与の不支給決定(減額を含みます。以下同じ。)は、臨時株主総会による決議が必要となります。
これに関しては、平成19年度の法人税法の改正により、臨時改定事由又は業績悪化改定事由に該当する場合において直前の届出を変更する制度が創設されたことによるものです。
今回の事例では、当該改定の事由は、法人税法上の「臨時改定事由」に該当するものと考えられますので、臨時株主総会等の決議をした日から1月を経過する日までに所轄税務署に対し「事前確定届出給与に関する変更届出書」を提出する必要があります。
ただし、不支給の場合には、届出額に対して、支給額が0円となりますので、そもそも経費として計上した金額がありません。
そのため、変更届出書の提出の有無に関わらず、損金不算入となる部分はありません。
3. 社長に支給する事前確定届出給与の取扱い
社長については事前確定届出給与を届出どおりに支給したが、専務には支給を行わなかったとのことです。
会社全体とし事前確定届出給与を届出どおりに支給していませんので、専務に支給された事前確定届出給与全体が損金不算入になるのではないかと考えがちです。
しかし、事前確定届出給与は「その役員の職務につき所定の時期に確定した額の金銭を交付する旨の定めに基づいて支給する給与」と規定されていることから、理由があり改定が行われた役員を除き、届け出たそれぞれの役員に支給する給与が届出の通りに支給されている限り、今回のように専務に対して支給を行わなかったとしても、社長に対して支給した給与については、損金の額に算入されることになります。
4. 臨時株主総会での決議及び役員給与辞退届出書の提出
この質問の場合、社長及び専務には会社が臨時株主総会で役員に対する事前確定届出給与の支給決定をしている関係上、支給日を以て役員給与請求権が生じるものと考えられます。
従って、専務の事前確定届出給与を不支給とする場合には、臨時株主総会での決議のほか、役員給与辞退届出書の提出(給与の請求権を消滅させる目的)が必要となります。
なお、給与等の支払を受けるべき者が、既に支給時期が到来した給与の受領を辞退した場合には、原則として(支払者の債務超過の状態の継続のため支払不能と認められる場合を除き)、辞退したときにおいてその支払があったものとして源泉徴収が行われることとされていることを付記しておきます。
いずれも法人税法上の課税を回避する目的ではなく、一度臨時株主総会で決定した決議内容を変更するため、税法以外のリスクを回避する目的からも作成することを推奨いたします。
5. まとめ
一度届出を提出した事前確定届出給与の内容に変更がある場合には、「事前確定届出給与に関する変更届出書」を提出する必要がありますが、実質的に不支給とする場合には提出の有無にかかわらず、法人税法上の課税は発生しません。
ただし、臨時株主総会で決議しただけでは、未払給与の請求権が残ってしまい、会社のリスクを消しきれないことから、役員給与辞退届出書を提出してもらうことをお勧めします。